最先端技術と社会のギャップ

みなさんこんにちは!約一ヶ月ぶりの更新になってしまってすみません(^ ^;)

さて今回は出願対策の話から離れて、僕が今学期学んだことを少し書いてみたいと思います。

突然ですが、”Make” と “Manufacture” の違いを聞かれたら、どう答えますか?

日本語に訳すとどちらも「作る」「製造する」と、まあ「モノを作る」ということになるわけですが、この二つは似て非なるものなのです。
“Manufacture” には世界を変える力があって、 “Make” にはそれが欠けている。僕も最初は「???」 でしたが、最終的にはこれに帰着しました。

論文や技術系のジャーナルを読むようになって初めて知ったことですが、僕らが思い描いている10年後、20年後のテクノロジーというのは、実は既に確立されているものがほとんどです。
例えばですが、1リッターのガソリンで100km走れて、かつ実用性も備えた車が存在すると言ったら信じますか?燃費の良い車の代名詞、トヨタ・プリウスでも32.4km/Lです。それが突然その約3倍の、100km/L。
ですがこれ、実在するんです。今年10月にフランスのルノー社が公開したEOLABというコンセプトモデルは、僕らが普段目にする車とほぼ変わらない形状ながら100km/Lの燃費を記録しています(写真参照)。今の一般的な車で20km/Lくらいなので、平たく言っちゃえば今の車より5倍環境に優しいことになります。今から全ての車をこれに置き換えちゃえば自動車のCO2排出問題なんて一気に解決してしまいそうですよね。

しかし、現実は普及どころか名前も聞いたことがない人がほとんどだと思います。なぜでしょうか?

ここで最初に挙げた話に戻ってきます。結論から言うと、この車を ”Make” することには成功したのですが、 “Manufacture” するにはまだ至っていないということです。EOLABにはカーボン複合素材をはじめとした最先端素材が惜しみなく投入されていて、その車重はわずか400kg(!)という驚異的な軽さに抑えられています。同じ大きさの乗用車が1000kgだといえばどれだけ軽いか伝わるでしょうか。しかしその反面、そのコストはとてつもないものになっています。このコンセプトモデルを開発するのにかかった費用はフェラーリ数十台以上にも上るでしょうし、開発費を差し引いた製造費用だけでも、現時点では数千万円かかるはずです。これではどれだけ燃費が良くても買ってもらえそうにないですよね。

つまり、最先端技術を開発するだけでは、世界に変革は起こせないということなんです。コスト=ビジネスの制約もクリアして普及することができて、そうして初めて「イノベーション」になれる。だからこそ、費用も含めた生産効率を追求した先にある「モノづくり」を意味する “Manufacturing” が重要になってくるんです。

つい最近トヨタ自動車が水素自動車である “MIRAI” を発売して話題になっていますが、実は水素自動車の技術自体は10年以上前から存在していて、実際に様々なメーカーが試作車を発表していました。ですが当時は一台約数億円ととても量販できるようなものではなく、それを今回原価700万円まで抑えて製造することに成功したのがトヨタで、そしてそれこそがトヨタが起こした「イノベーション」だということなんです。

エンジニアリングのクラスというと多くは物理と数学を駆使したテクニカルなものが多い中、より広い視点で捉えて「社会の中でのエンジニアリングの意味」まで考えたこのクラスはとても斬新で面白いものでした。事実、この教授は教授職と研究の傍ら研究成果を実用化するべく “Flexsys” という会社を立ち上げそのCEOも務めており、現に技術政策についてオバマ大統領に直接提言している方だったので説得力も言葉の重みもすごかったです。(試験の難易度が常軌を逸してなければ完璧だったんですが(笑)

これは彼が最後のクラスで話していたことなのですが、最先端技術と社会の間にはとても大きな “Technology Gap” があって、その間を繋げる人材の需要は飛躍的に高まってきているのだそうです。文系・理系に特化したスペシャリストももちろん重要ですが、今進路を考えている中高生の方などは特に、その間の架け橋になるという選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。

1ルノー・EOLAB
形状は現存のコンパクトカーに準じていて実用性も非常に高い。
group.renault.comより引用

2トヨタ・MIRAI
toyota.jp より引用

3オバマ大統領と面会時の教授
me.engin.umich.edu より引用